甲子園まであと2勝

2015年7月23日
力投する不二越工の米田選手

 全国高校野球選手権富山大会は富山工、富山東、高岡商、新湊がベスト4に進出しました。24日に準決勝、25日に決勝がともにボールパーク高岡で行われ県代表が決まります。

 甲子園を目指して47校が出場し、すでに43校が敗退。勝ち残るのは1校だけです。3年生にとって最後の大会である夏。勝者だけでなく、敗者の姿に心を打たれることが多くあります。今年も力を尽くして戦ったグッドルーザーに出会いました。

【エースの誇り最後まで】2回戦・富山1-0不二越工

 不二越工の米田大悟君は昨夏の県大会で2年生ながらチームをベスト4に導いたサウスポーの好投手です。この夏は2回戦で敗れましたが、0-1とリードされた5回から登板すると逆転を信じて無失点で投げ抜きました。1点を追う九回裏の攻撃では自ら二塁打を放ち二死三塁の好機をつくります。しかし、ライナー性の打球が相手遊撃手のグラブに収まってゲームセット。本塁に走り出しながらそれを見届けた米田君は白い歯をみせて笑顔をつくりました。「昨年は僕のせいで負けたので、今年は最後までしっかりやって(勝っても負けても)笑顔で終わろうと決めていました」

 走者を背負いながらも粘り強く決定打を許さないのが米田君の持ち味。昨年の春からエースとして名門校のマウンドに立ってきました。この日は直球の伸び、低めに集める精度とも上々で、最後の夏にかける思いを感じました。しかし、本人によると調子は満足のいく状態ではなく、前日も投球フォームの微調整を行ったとのこと。昨夏以降はチーム内外からの期待を背負いながら試行錯誤を続けてきたようです。試合後、泣き崩れる仲間もいましたが、米田君は涙をみせず、キャプテンとともに率先して道具を片づけていました。

 「今日も守りに助けてもらいました。先発した2年生投手が1点に抑えてくれたのが良かったと思います。(甲子園出場は果たせなかったが)やるべきことはやってきたので、あとは後輩に託します」

【思いのこもった大飛球】準々決勝・高岡商8-5富山商

 昨夏に甲子園大会でベスト16まで進んだ富山商は準々決勝で敗れました。昨夏の県大会決勝と同じ高岡商との対戦は点の取り合いとなり、試合時間は3時間を超えました。九回表に4-8と突き放されましたがあきらめません。裏の攻撃で二死から1点を返してなお一、二塁。長打が出れば同点もみえてくる場面で代打に起用されたのは3年生の森允紀君でした。

 森君は副キャプテン。この試合では攻撃、守備のタイムアウトで再三にわたりベンチから伝令に走り、仲間を励ましてきました。左打者の森君に対し、相手投手も緊張感からか制球が定まらずボールが3つ先行します。1球見送った後の5球目を積極的に狙った森君の打球は勢いよく右中間方向に上がり抜けるかに思われました。しかし、高岡商の中堅手が背走しながら好捕。勝負が決しました。

 ネクストバッターボックスにいたのはキャプテンの若木飛悠雅君。試合後に記者に囲まれてその時の気持ちを尋ねられ、「チームのことを考えて雰囲気を盛り上げてきてくれたのが森。そんな森が最後に良い打球を打ってくれてうれしかった。全員で最後まであきらめずに戦えた」と話しました。

 森君に涙はありませんでした。「(当たりは良くても)次の打者につながなければいけなかったのでダメですね。自分の打てる球を自信をもって振り切ろうと考えていました。それは(監督の)前崎先生からずっと指導してもらってきたこと。最後は振り切ろうと。それはできました。甲子園には行けなかったけれど自分たちには成長したという実感はあります。仲間と一緒に持ち味を出して高岡商と戦い、やり切ったと思います」

攻撃のタイムで次打者を励ます森選手(右)