指導者の強い信念がチームを作り上げる 〜富山県野球協議会 今年度第3回指導者研修会より〜

2016年2月2日
 今回の指導者研修会の前半はシンポジウムと公開討論会が実施された。テーマは『全国大会』だ。まずは県内の小中高校で昨年、全国大会に出場した監督らがシンポジストとして集結し、どんなことに取り組み、何を経験したのかを包み隠さず語った。練習内容や選手の体調管理、試合に臨む準備など様々なエピソードは興味深かったが、特別なことをしている印象は正直なかった。ただ一つ感じられたのは、チーム方針が徹底されているのではないかということだ。明確な目標を定め、全国を見据えたチーム作りに励んでいる様子がそれぞれの言葉から垣間見えた気がする。
 前回の研修会でもあったように、〈メンタル〉の重要性は各チームから実感として語られた。既にトレーニングに組み込んでいたチームもあれば、大舞台を経験してその必要性を再認識したという監督もいた。それは選手のみならず、指導者としての己に必要な要素として、である。選手に最高のパフォーマンスを発揮させてやることや、全国の舞台をどれだけ現実的なものとして捉えているかといったところで、指導者が非常に高いレベルにあるのだと感じた。
 次の公開討論会で壇上に立った東海大相模高校の門馬敬治監督と仙台育英学園秀光中等教育学校の須江航監督は、その象徴ともいえる存在だ。昨夏を制した東海大相模高が掲げていたチームのキーワードは〈想定内〉だったという。これほど鍛え抜かれた選手たちでも必ず失敗はするのだ。相手の好守に阻まれることもある。その状況に対して選手も監督も「受け入れられる強さがあるか」が大切だと門馬監督は説く。練習や指導内容については、「野球は昔からこうだというのが根強く残り過ぎ」だと指摘し、新たな学びを得る必要性を強調した上で、「自分の噛み砕きが大切。自分流にどこまでオリジナルを作り出せるか。人から学んだことは大事だが、自分で学んだことはもっと大事」であると、自身の考えを述べた。
 一方、全国中学校軟式野球大会で一昨年は優勝、昨年は準優勝の結果を残した仙台育英学園秀光中の須江監督も勝つための野球を“独自の視点”でロジカルに解説。一つ一つのプレーを数値化、また可視化する方法を披露した。そして「チームとして〈いつまでにはこうなっていたい〉という正しい目標設定が大切」だと訴えた。
 1時間半にも及んだ二人の話はとても紹介しきれないが、とにかく勉強熱心でありながら、自分だけのブレない信念を持っていることが強烈に伝わってきた。そんな指導者の姿勢に引き上げられるように選手は成長し、揺るぎない信頼関係も築かれていくのだろう。決して強豪校に限った話ではなく、どんなチームにおいても指導者の本気が選手の心に届けば、チームは一つになるのだ。

 後半は実技講習会が開かれ、まず始めに元西武ライオンズの尾山敦氏(高岡商出身)が投手力向上を図る数々のメニューを紹介した。次にトレーニングコーチとして全国で活躍する須田和人氏が、野球における独特な身体の使い方を様々な切り口から解説。下半身から上半身、そして手首、指先に伝わる力の連動を丁寧に分解していった。ウォーミングアップ一つをとっても、これまでの常識を覆す手法を唱え、新鮮な学びを県内の指導者に提供した。

 次回の第4回指導者研修会は2月20日(土)に開催され、あわせて富山県ベースボールフォーラムと富山県野球情報交換会も実施される。
(1月30日取材・文 中沖 紘一)