【連載①】高校3年間をバレーボールに捧げた井城さん/ 「日本一」を目指した日々の教訓を一冊に

「高校時代にスポーツの全国大会で決勝に進んだことがある人」は、競技スポーツ経験者の中で何%ぐらいだろうか? 例えば高校野球なら、2015年度の登録部員数が168,898人、そのうち夏または春の甲子園で決勝に進む4校のベンチ入りメンバーは計72人。全体の0.04%程度だ。競技人口や、個人・団体などスポーツの特性によって大きく左右されるだろうが、おそらく1%未満なのではないか?

 バレーボールの競技経験者で、請われれば指導にもあたる井城斎加さんも「1%未満」の1人である。長崎県出身で、九州文化学園高(長崎)時代、全国高校総体のバレーボール競技で決勝に進んだ。現在、富山市内に住み、2児の母として、高校の保健体育講師として忙しい日々を送る。そんな中、「1%未満」の舞台に立った経験が、人生の支えになっていることを実感することが少なくないという。

筆者:「誰に対しても、どんな場合でも、最善を尽くすべきだとは分かっている。でも、できない人、時、心境があるのはどうしたものか?」
井城さん:「情けは人の為ならず、ですよ。誠実に対応すれば、いつか自分に返ってきます」

自身の仕事についての悩みを明かすと、明確な答えが返ってきた。「情けは人の為ならず」とは、九州文化学園高バレーボール部OGの合言葉であるらしい。彼女の年代ではあまり用いないと思われる古風なフレーズだが、「経験から、ものを言っている」というのが分かる。ストンと胸に落ちた。教員経験があるからだろうか、不思議な説得力もある。

「こんな風に、自分がバレーで学んだことを紹介するのって、誰かの役に立つんじゃないでしょうか? 日本一を目指した経験って、自分で言うのもなんですが、貴重だと思うんです」

確かに。高校の部活動においてチームの顔ぶれは毎年変わる。そもそも学校は「戦力をそろえる」ことを優先した組織ではなく、指導者と選手の相性もある。いろんな意味で制約が多い環境の下、全国大会の決勝まで進むチームを作るには、練習、努力、運、実力、知識、支援……。いろんな要素がすべて相乗効果を生み、勝ち続けることが必要だ。高校日本一を目指すノウハウは、人生やビジネスでの成功を切望する人にとっても有効だろう。

というわけで、高校3年間をバレーボールに捧げた井城さんの、体験から得た教訓を紹介していきたい。これまで書き溜めてきた文章をまとめ、『常に今に全力を尽くせ』と題した書籍を2016年3月に出版した。

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ちなみに井城さん、旧姓は高嶋という。甲子園で過去最多の通算63勝を挙げた智弁和歌山高の高嶋仁監督は伯父である。文章から、勝負にこだわる名将のDNAを読み取ってみるのもいいかもしれない。

連載は次回以降、井城さんの著書『常に今に全力を尽くせ』より、印象に残った部分を抜粋して構成する。

(文・写真 若林朋子)

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《井城斎加さんの略歴》
 いいき・いつか 1981年長崎県五島市生まれ。小学3年からバレーボールを始め、九州文化学園高(長崎)時代は、2年時に全国高校総体と国体で2位、主将を務めた3年時は全国高校総体3位、ベスト6(優秀選手賞)に選ばれる。筑波大体育専門学群卒。結婚を機に富山市在住。2016年3月に著書『常に今に全力を尽くせ』(税込1,500円)を発刊。

・問い合わせ・著書の購入は井城さんまで。
メールアドレス:takashima5it@gmail.com
本の購入:http://mai1999.buyshop.jp/