バドミントン佐々木選手、リオ五輪への決意語る

2016年6月18日

 リオデジャネイロ五輪に出場するバドミントンの佐々木翔選手(トナミ運輸)が18日、高岡市で練習を公開し、併せて記者会見を行った。会見の主な内容を詳報する。
100147_01.jpg 国際大会を転戦していたため5月に五輪出場が決まってから初めての高岡入り。トナミ運輸から日本バドミントン協会に派遣されているナショナルチームの舛田圭太コーチとともに約1カ月、地元でチームメートと練習を積みコンディションを上げていく。

 試合が続き体力がやや落ちたという佐々木選手は高岡で日課にしていた二上山でのランニングを再開したという。集まった報道陣に「試合で戦っているのをイメージしながら走っている。きつい今は試合のあの部分だ、とか。逆に試合の時には山を走っているイメージを重ねてプレーしている。四季を感じられるし、街を一望できるのも気に入っている。始めたのはロンドン五輪の1年後から。山登りは自分にとって大きなプラスになっている」と説明していた。

 今月30日に34歳になる佐々木選手。「前回のロンドン五輪の後、リオ五輪を目指してきた。出場したいという思いと、(その4年間が)競技人生の集大成になるという思いでやってきた。前回の五輪を経験しているので今回は余裕をもってできると思う。スポーツを通じて人間形成ができればと思っている。いろんなことがあったが壁を乗り越えることができ、この4年間に悔いはない。仕上がりは良い。一度崩してから大会に向けてつくり上げていきたい」などと話していた。

<会見詳報>

▢2度目の五輪出場が決まっての感想

 ロンドン五輪後、結果がでない中でも会社にはサポートしてもらい感謝している。舛田コーチには良い時も悪い時も見守ってもらった。みなさんからの恩に報いたい。
 舛田コーチとは2度の五輪に向けて8年一緒にやってきて目指している勝ち方を共有し、意思疎通しながらやってきた。単発で決めにいくのでは世界で戦えない。体と頭の柔軟性、球質を上げていくことに取り組んできた。

 五輪に出られるかどうかに関係なく、五輪を目指して4年をやり切ることが自分にとって一番大事だった。やり切ったうえでの結果はどうにもできないから。
 世界のトップ選手の顔ぶれは同じでも、(プレースタイルなど)流れは変わっていく。変化に対応し続けなければ取り残されてしまう。自分自身も、つなぎの部分など柔軟に対応できるように心掛けてきた。

(五輪時は34歳。遅咲きの選手であったことについて)
 自分は不器用で、目標にすんなりと到達できない。時間がかかってしまった。2番手のことが多かったが、そのなかでも1番になりたいと思ってやってきた。

(支えてくれた家族に対して)
 妻は地元(北海道)の同級生で、出場できなかったアテネ五輪後に結婚し今は子供も2人いる。競技中心で家族のためになにもできていないのは申し訳なく思う。ただ、幼稚園で「パパがオリンピックに出る」と言っているそうで、それを聞いてうれしかったですね。

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▢4月に桃田選手の不祥事が発覚し、繰り上がりのようなかたちでの出場決定になったことについて

 自分でもどう受け止めたらよいのかすぐには分からなかった。出場が決まっての記者会見でも報道のみなさんからどんな質問をされるのか想像がつかなかった。それを経て五輪に向けて走り始めることができたと思う。きょうもこれだけ多くの記者の方に集まっていただき、4年前のことを思い出している。

 気持ちは複雑で、葛藤があった。桃田選手や彼の家族、支えてきた方々の気持ちは背負ってやっていかなければいけないと思う。しかし必要以上に考えすぎてもプレーにはよくない。ある程度の線引きをして、みなさんが声を掛けてくれるように「自分のバドミントンをすればよい」と考えている。
 (状況に)振り回されても帰る場所があった。6年前からやってきたメンタルトレーニングのおかげだとも思う。試練を乗り越えられるよう準備し、自分の軸をつくってきた。だからこそ試練が与えられたのではないかと思っている。

              ◇

▢五輪をどう戦う

 ロンドン五輪では目標である林丹選手との対戦を目指して実現することができた。(彼と熱戦を繰り広げた)あの試合で自分もまわりに認知されるようになった。今回も組み合わせはどうなるか分からないが、いずれにせよ縁のある相手と対戦することになるだろう。林丹選手だけでなく、これまで多くの選手と勝負してきたので。
 (結果目標は定めておらず)内容にこだわって勝ち進みたい。ぎりぎりの戦いになる。気持ちの準備をしていきたい。

 試合までの準備が大切だと思っている。自信をもってコートに立てるように準備をしたい。年齢のせいで体力が落ちたとは感じていない。ただし、転戦が続いて落ちている部分はある。高岡ではランニングを含めて鍛え直したい。今日もしっかり体を入れてヘアピンショットを打つように心掛けた。

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<舛田圭太ナショナルチームコーチの話>
 佐々木について、年齢とともに体力が落ちているのではないか、とみなさんは言うが、実際にそうならばナショナルチームには選んでいない。「できる」と判断して4年間選んできた。
 体のケアをはじめバドミントンへの取り組み方はナショナルチームの中でも佐々木が一番だと思う。若い選手には彼を見習うようにずっと言っている。
 ここまで維持できるのはすごいこと。また、メンタルトレーニングや栄養学をはじめ新しいことを積極的に採り入れている。国内におけるバドミントン界のサポート体制も良くなっており、それをフル活用している数少ない選手のひとりだと思う。
 環境を生かして彼は選手の寿命を長くした。僕から「引退は(五輪後ではなく)次のトマス杯でメダルを取ってからでもいいんだよ」と言ったぐらい。ここまでできる。こうやればこの年齢まできるというのを証明してくれた。

 大会までネットプレーをはじめ守りを大事にしながら練習することになる。前回の五輪は(早い段階で出場がほぼ確定していたので)1月から準備することができたが、今回は準備期間が短い。バドミントンにおいて、スマッシュなどを使って攻撃するためには相手にチャンスボールを上げさせる必要があり、そのための守りが重要。前回の五輪で佐々木の守りは完ぺきだった。あと1カ月でどこまで守りを改善し、ロンドンの時のような状態にもっていけるかがポイントになる。

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